MS&ADインシュアランスグループ
最終更新 2026年9月21日
年間配当は入金済み額ではなく、現在の株数と会社予想の配当から求めた相当額です。
どんな会社か
- 損害保険の持株会社。中心は三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保の損保2社で、正味収入保険料は2社合計で3兆2,256億円あります。
- 2008年に設立。三井住友海上グループホールディングスとして発足し、2010年4月にMS&ADへ商号を変えました。
- 生保とネット損保も傘下。三井住友海上あいおい生命、三井住友海上プライマリー生命、ネット専業の三井ダイレクト損保、それに海外の子会社があります。
- 利益のいちばんの稼ぎ手は海外。2026年3月期の海外事業の当期利益2,344億円は、国内最大の三井住友海上1,829億円を上回ります。

2027年4月1日の損保2社の合併を見る
三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は、2027年4月1日に合併します。存続会社は三井住友海上で、新会社の商号は「三井住友海上あいおい損害保険株式会社」。この持株会社も、同じ日に「三井住友海上グループ株式会社」へ商号が変わります。合併基本計画の【最終】は2026年5月20日に承認されました。配当の方針を決めるのは持株会社なので、還元方針そのものは変わらない見込みです。
同じ日に公表した「グループの2030年度目指す姿」では、政策株式の売却が終わったあとの2030年度でも、政策株式売却損益を除いた修正利益で8,000億円超・ROE11%以上を出す収益構造をつくる、としています。2026年度の目標は同5,300億円・ROE10%です。
出典:2026年3月期有価証券報告書2026年3月期決算短信〔IFRS〕2026年3月期決算説明資料MS&ADグループ経営計画(2030年度目指す姿・2026年度計画)等の策定に関するお知らせ。
ディフェンシブか、景気敏感か

出典:2026年3月期決算説明資料(国内損害保険子会社の状況・自然災害の発生保険金)2026年3月期決算短信〔日本基準〕(業績予想の前提条件)。
強みと懸念点
- 13期続く増配。配当を減らさず増やし続けてきました。「利益の半分を株主に返す」方針も明文化していて、配当で足りない分は自社株買いで返す形です。
- 海外が最大の稼ぎ手。海外事業の利益は、国内最大の子会社である三井住友海上を上回ります。国内の人口減少に左右されにくい形です。
- 損保2社の合併。2027年4月に、グループの損保2社が三井住友海上あいおい損害保険として1つの会社になります。重なる組織やシステムをまとめることで、費用を減らせる形です。
- 厚くなった資本。保険金の支払いに備える自前のお金の割合が、1年で上がりました。
- 配当の一部は特別配当。配当の2割ほどは、持ち合い株を売ったお金を元にした特別配当です。その株は2030年3月末までにゼロにする方針で、売り切ったあとは上乗せの元手がなくなります。
- 今期は減益の予想。前の期は大きな災害が少なく、持ち合い株の売却益も乗っていました。今期は災害の保険金を例年並みに見込み、減益の予想です。売却が終わったあと、本業だけで利益を伸ばせるか。
- 自然災害と市況。前の期は大きな災害が少なく、支払った保険金が大きく減った年でした。災害の多い年や相場が崩れた年は、利益が逆に大きく減ります。
- 保険料調整と情報漏えい。2024年に、保険料の事前調整で公正取引委員会から課徴金の命令を受けました。持ち合い株をゼロにする方針も、この一連の処分から出たものです。
出典:2026年3月期有価証券報告書2026年3月期決算短信〔IFRS〕グループ経営計画の策定に関するお知らせ自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ2027年3月期第1四半期決算短信公正取引委員会「損害保険会社らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について」(2024年10月31日)。
いつも見ている8つの基準
配当はどう増えたか

総還元性向50%(修正利益の50%)を基本とする/配当は累進配当を目指し、利益成長に応じて一株当たり配当の増加を検討/総還元性向50%と配当総額の差額は、自己株式取得で対応
2026年5月20日のグループ経営計画に書かれた株主還元方針です。累進配当は「減らさずに維持か増配のどちらかにする」という意味ですが、約束ではなく「目指す」という書き方になっています。2026年度は2,700億円の自己株式取得を方針とし、うち1,900億円(上限)の取得を5月20日に決議。8月末までに2,391万9,200株・1,091億円を取得しました。
配当・配当性向の10年表
| 3月期 | 1株配当(円) | うち特別配当 | 配当性向(日本基準) |
|---|---|---|---|
| 2017 | 40 | — | 34.2% |
| 2018 | 43.33 | — | 50.0% |
| 2019 | 46.67 | — | 42.6% |
| 2020 | 50 | — | 60.4% |
| 2021 | 51.67 | — | 60.6% |
| 2022 | 60 | — | 37.9% |
| 2023 | 66.67 | — | 51.1% |
| 2024 | 90 | — | 38.8% |
| 2025 | 145 | 45円 | 32.5% |
| 2026 | 160 | 35円 | 30.3% |
| 2027予想 | 170 | 30円 | 58.0%(国際基準) |
2024年4月1日に1株を3株にする株式分割をしているため、2024年3月期までの配当は3分の1に換算しています(2024年3月期の実額270円=調整後90円)。配当性向は10年をそろえるため日本基準の1株利益で計算しました。2026年3月期を国際基準の1株利益342円98銭で計算すると46.6%になります。2027年3月期の予想58.0%は国際基準です。
出典:2026年3月期有価証券報告書2021年3月期有価証券報告書2026年3月期決算短信〔IFRS〕(配当の内訳の注記)グループ経営計画の策定に関するお知らせ自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ自己株式の取得状況に関するお知らせ(2026年9月3日)。
いまの利回りの位置

過去の期末利回りを数字で見る
| 3月期 | 3月末終値 | 期末利回り |
|---|---|---|
| 2017 | 1,180円 | 3.39% |
| 2018 | 1,118円 | 3.87% |
| 2019 | 1,123円 | 4.15% |
| 2020 | 1,008円 | 4.96% |
| 2021 | 1,083円 | 4.77% |
| 2022 | 1,326円 | 4.52% |
| 2023 | 1,369円 | 4.87% |
| 2024 | 2,711円 | 3.32% |
| 2025 | 3,225円 | 4.50% |
| 2026 | 4,032円 | 3.97% |
出典:各年の1株配当と、東京証券取引所の3月末終値。終値は株式分割の調整後でそろえ、各年の配当(特別配当を含む)を割って、丸める前の値で単純平均しました。現在の利回り・PER・PBRは、2026年9月18日終値5,217円、会社予想の配当170円・1株利益295.75円、2026年3月末の1株当たり親会社所有者帰属持分4,424.60円(国際基準)から計算しています。
業績と財務
この会社は2026年3月期から、連結決算の基準を国際基準(IFRS)に変えました。
そのため同じ2026年3月期に、2とおりの数字が有価証券報告書に並んでいます。国際基準では保険収益6兆4,360億円・当期利益5,106億円・1株利益342円98銭・ROE8.65%。日本基準では経常収益7兆6,530億円・純利益7,873億円・1株利益528円87銭・ROE17.96%です。国際基準の数字は2年ぶんしかないため、下の10年のグラフと表はすべて日本基準でそろえました。



枠の中のROEと自己資本比率は、会社がいま正式に使っている国際基準の数字(親会社所有者帰属持分当期利益率・親会社所有者帰属持分比率)です。

業績・財務の10年表(日本基準)
| 3月期 | 経常収益(億円) | 正味収入保険料(億円) | 経常利益(億円) | 純利益(億円) | EPS(円) | ROE | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2017 | 53,352 | 34074 | 3526 | 2104 | 116.98 | 7.8% | 12.8% |
| 2018 | 52,178 | 34410 | 2115 | 1541 | 86.68 | 5.5% | 13.1% |
| 2019 | 55,004 | 34976 | 2908 | 1927 | 109.57 | 6.8% | 11.9% |
| 2020 | 51,684 | 35737 | 1577 | 1430 | 82.79 | 5.5% | 10.6% |
| 2021 | 48,922 | 35010 | 3065 | 1444 | 85.26 | 5.2% | 12.8% |
| 2022 | 51,320 | 36091 | 3905 | 2628 | 158.17 | 8.3% | 13.0% |
| 2023 | 52,508 | 39332 | 2923 | 2110 | 130.54 | 6.6% | 12.7% |
| 2024 | 65,729 | 42617 | 4164 | 3693 | 231.83 | 9.8% | 16.6% |
| 2025 | 66,608 | 46743 | 9290 | 6917 | 445.52 | 16.3% | 15.2% |
| 2026 | 76,530 | 50048 | 11202 | 7873 | 528.87 | 18.0% | 16.7% |
営業CFと期末の現金(億円・日本基準)
| 3月期 | 営業CF | 現金及び現金同等物 |
|---|---|---|
| 2017 | 10869 | 14,159 |
| 2018 | 8226 | 13,235 |
| 2019 | 7767 | 17,985 |
| 2020 | 6679 | 21,987 |
| 2021 | -3239 | 19,944 |
| 2022 | 2367 | 22,562 |
| 2023 | 1942 | 26,464 |
| 2024 | 5495 | 27,338 |
| 2025 | 6602 | 22,395 |
| 2026 | 7626 | 22,229 |
長期数値の出典:各年の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」。2021年3月期2026年3月期。2023年3月期の数字は、海外子会社に国際会計基準の保険契約の基準を適用したことで遡って直されているため、2026年3月期の有価証券報告書に載っている修正後の数値(経常収益5兆2,508億円・経常利益2,923億円・純利益2,110億円・EPS130円54銭)を使いました。
同じ仕事の会社と比べる
同じ損保3メガの東京海上ホールディングスとSOMPOホールディングスを並べました。3社とも2026年3月期から国際基準なので、同じ土台で比べられます。
| 2026年3月期 | MS&AD 8725 | 東京海上 8766 | SOMPO 8630 |
|---|---|---|---|
| 保険収益 | 6兆4,360億円 | 7兆6,936億円 | 5兆3,729億円 |
| 当期利益 | 5,106億円 | 5,313億円 | 6,401億円 |
| ROE | 8.7% | 7.1% | 13.7% |
| 自己資本比率 | 21.7% | 24.1% | 27.8% |
| 配当性向 | 46.6% | 78.0% | 21.4% |
| 営業CF | +9,540億円 | +1兆3,906億円 | +7,064億円 |
| 予想利回り | 3.26% | 2.99% | 2.90% |

3社とも2026年3月期から国際基準(IFRS)を適用しています。自己資本比率は「親会社所有者帰属持分比率」、ROEは「親会社所有者帰属持分当期利益率」です。SOMPOホールディングスの数字は2026年3月期有価証券報告書と決算短信によります。予想利回りは2026年9月18日終値5,217円・8,200円・6,891円と、今期予想配当170円・245円・200円で計算しました。
出典:MS&AD 2026年3月期決算短信〔IFRS〕東京海上ホールディングス 2026年3月期決算短信〔IFRS〕SOMPOホールディングス 2026年3月期決算短信〔IFRS〕、東京証券取引所(2026年9月18日終値)。
直近の決算と注意点
2027年3月期第1四半期は、通期予想の77.3%を3か月で稼ぎました。
通期予想(当期利益4,250億円・前期比16.8%減)と配当予想170円に修正はありません。3か月で通期予想の77.3%に達していますが、自然災害の保険金は夏から秋にかけて出るため、第1四半期の進み具合がそのまま通期にはつながりません。会社が今期の前提に置いた国内の自然災害の発生保険金は、三井住友海上830億円・あいおいニッセイ同和670億円です。
見るところは2つです。1つは、この夏の自然災害が前提の範囲に収まるか。もう1つは、通期予想が据え置かれたままか。次の中間決算は11月中旬の予定です。
出典:2027年3月期第1四半期決算短信〔IFRS〕2026年3月期決算短信〔日本基準〕(業績予想の前提条件)。
決算とIRの記録
出典:自己株式の取得状況に関するお知らせ(2026年9月3日)2027年3月期第1四半期決算短信2026年3月期有価証券報告書2026年3月期決算短信〔IFRS〕2026年3月期決算短信〔日本基準〕グループ経営計画の策定に関するお知らせ自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ公正取引委員会の報道発表(2024年10月31日)。
自己資本比率は、保険業では製造業の基準が当てはまらないため評価していません。営業利益率も、保険会社が営業利益を開示しないため評価していません。理由は本文と同業比較に書いています。
この会社は2026年3月期から連結決算の基準を国際基準(IFRS)に変えました。上の枠の数字と本文は国際基準、10年の推移を見るグラフと表は日本基準です。どちらの基準かは、その都度書いています。
2024年4月1日に1株を3株にする株式分割をしています。1株あたりの金額(配当・EPS・株価)は、すべて分割後にそろえました。
過去の利回りは、各年の配当と3月末終値から計算しました。金額と図の数字は読みやすさのため丸めています。