住友精化
※1株配当と配当性向は2026年3月期の実績です。1株配当は2026年4月1日の株式分割(1株→5株)にそろえた金額で、会社が実際に払ったのは220円。2027年3月期の予想は70円です。
どんな会社か
- 紙おむつの吸水材をつくる。高吸水性樹脂といって、自分の重さの何十倍もの水を抱え込む白い粉です
- 1944年に設立。肥料を製造・販売する会社として大阪で始まりました。いまは住友化学が株の32.43%を持ちます
- 売り先は日本の外が大半。第1四半期では日本が23.7%で、いちばん大きいのは中国の33.1%です
- 売上の8割が吸水性樹脂。もうひとつの柱の機能マテリアルは319億円で、売上の21.5%にあたります
工場は兵庫の別府、姫路、千葉の3か所。海外はシンガポール、ベルギー、韓国、中国、台湾にあります。従業員は連結で1,438名。
売り先は日本の外が大半です。第1四半期の売上403億9,700万円のうち、日本は95億7,300万円で23.7%。いちばん大きいのは中国の133億9,100万円で33.1%にあたります。
「自己資本を減らす」と言って、配当を1.6倍にした
いちばん右が2027年3月期です。5月に会社が出した予想は48円。それが8月6日に70円へ変わりました。下に敷いた48円が当初の予想、上に乗っている22円が今回増えたぶんです。
2026年8月6日、会社は4つの資料を同じ日に出しました。第1四半期の決算短信。未定にしていた通期業績予想。2045年に向けた長期ビジョンと新しい中期経営計画の骨子。4つめが配当方針の変更です。
変更の中身はこうです。
(変更前)配当性向30%以上を基準に、安定的な配当実施および今後の事業展開に備えるための内部留保などを勘案して決定する
(変更後)原則として配当性向30%以上かつ株主資本配当率(DOE)4.5%以上を基準に、安定的な配当の実施および今後の事業展開に備えるための内部留保などを勘案して決定する
DOEは、配当の総額を株主資本で割った数字です。利益ではなく会社に貯まっている自己資本に対して、何%配るかを見ます。利益が減った年でも配当を落としにくくなる指標です。
もうひとつ、同じ日の中期経営計画の骨子にこう書かれています。
現状の当社グループの資本構成は自己資本の比率が高く、あるべき自己資本の水準の検討と資本規律の確保に向けた取り組みが急務であると認識しており(中略)自己資本比率の中期的な管理範囲を50〜60%に設定したうえで、現預金活用の効率化と機動的な資金調達により、規律ある成長投資と株主還元の更なる充実を進めます
いまの自己資本比率は67.8%です。会社はそれを50〜60%まで下げると言っています。減らしたぶんは成長投資と株主還元に回る、という順番です。DOEの導入はその一部にあたります。
市場の反応は速いものでした。発表前日の終値1,259円が、当日1,446円、翌日1,542円。2日で22.5%上がっています。
今期は減益予想。それでも増配する
減益の理由は開示にこう書かれています。
営業利益および経常利益は、シンガポール拠点での吸水性樹脂の製造設備増設に伴う固定費の増加などにより、減少する見通しです
設備を増やせば、動かす前から減価償却費と人件費がかかります。純利益だけが増える予想になっているのは、前期にあった特別損失が減るからです。
足元は好調です。第1四半期の売上高は403億9,700万円で前年同期比13.6%増、営業利益は34億5,200万円で47.5%増。純利益は3.1倍の32億6,300万円になりました。通期の純利益予想80億円に対して、3か月で40.8%まで来ています。
ディフェンシブか、景気敏感か
- おむつは景気で減らない。赤ちゃん用も大人用も、買う量は不況でほとんど変わりません
- リーマンの年を確認しました。2009年3月期は営業利益が58.1%減り、純利益も54.9%減りました。それでも配当は10円のまま据え置いています(配当性向45.9%)
- 2019年3月期も試されています。減損損失などで1株利益が8円76銭まで落ちた年。配当は20円を維持し、配当性向は228.2%になりました
- 売上は10年で減った年が2回だけ(2020年3月期の9.1%減と2024年3月期の0.04%減)
※原料はナフサです。原燃料の値段と為替で利益は動きます。今期の前提は1ドル157円、ナフサ1キロリットル86,700円。第1四半期の実績はナフサ118,900円で、前年同期の66,300円から1.8倍に上がっていました。会社はこの上昇分を販売価格に転嫁したと書いています。
いまの利回りは高いのか
業績と財務
PERとPBRは2026年9月4日終値。自己資本比率と配当性向は2026年3月期の実績です。
2026年3月期は売上高1,483億5,400万円、営業利益144億6,400万円、純利益76億7,700万円でした。営業キャッシュフローは174億8,000万円です。
営業キャッシュフローは2008年3月期から19年間ずっとプラスです。有利子負債は175億円で、自己資本1,036億円に対する比率は16.9%。手元の現金は180億円あります。
自己株買いも続けています。2026年5月に発行済株式の7.54%にあたる527万5,195株を消却し、さらに84万株を上限に買い付けて10月30日に消す予定です。
長期の目標として、会社は2030年度に売上2,000億円・営業利益175億円・ROE10%を掲げています。ただし、そこに至るKPIと具体策は2026年11月の公表待ちです。
| 吸水性樹脂をつくる3社 | 住友精化 | 日本触媒 | 三洋化成工業 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,484億円 | 3,999億円 | 1,279億円 |
| 営業利益率 | 9.75% | 4.38% | 7.83% |
| ROE | 7.8% | 4.2% | 9.8% |
| 自己資本比率 | 67.8% | 68.4% | 81.4% |
| 配当性向 | 37.3% | 100.8% | 24.0% |
| 配当利回り(予想) | 4.78% | 5.41% | 3.21% |
| 10年で減配した回数 | 0回 | 1回 | 0回 |
※3社とも3月期決算で、数字は2026年3月期の実績です。三洋化成工業は経常利益123億円に対して純利益156億円と、特別な利益が乗っている期にあたります。ROE9.8%と配当性向24.0%は、そのぶん割り引いて見る必要があります。日本触媒は2021年3月期に赤字となり、配当を45円から22円50銭へ減らしています。
- 増えた配当と方針。2026年に、利益だけでなく株主のお金も目安にして配る方針を加えました。株主のお金は利益ほど上下しないので、利益が落ちる年でも配当を下げにくくなります。2008年3月期から減配はありません。
- 資本の使い方。会社自ら「自前のお金が多すぎる」と認め、ためすぎたお金を成長投資と株主還元に回すと決めました。今期の増配も、利益が増えたからではなく、このお金の使い方を変えたことが元手です。
- 景気で減らないおむつ。紙おむつは、赤ちゃん用も大人用も、不況でも使う量がほとんど変わりません。その吸水材をつくる3社のなかで、利益率がいちばん高い会社です。
- 財務の耐久力。本業のお金の出入りは19年続けてプラスで、手元の現金は借金を上回ります。リーマン・ショックの年も、利益が大きく落ちた年も配当を据え置けたのは、この余力があったからです。
- 割合で増える配当。今期の増配は、利益が増えたからではなく、配る割合を上げたためです。今期はシンガポールの工場を増やす費用で減益の予想です。株主のお金を目安にした下限がある以上、利益が落ちた年ほど配当の負担は重くなります。
- 1事業への集中。売上と利益の8割近くが吸水性樹脂で、紙おむつの需要がそのまま効きます。売り先の4分の3以上が海外で、いちばん大きいのは中国なので、中国の景気や競争の影響を受けやすい会社です。
- 原燃料と為替。原料のナフサは原油から作られ、値段が大きく動きます。今期の出だしは会社の想定を大きく上回りました。会社は値上げで転嫁したと説明していますが、転嫁が遅れれば利益を削ります。
買った条件は、いまも成立しているか
決算とIRの記録
大きな変化があったときだけ、ここに足していきます。買い増しや売却をしたときは、その理由もここに書きます。
数字は2026年9月4日時点。出典=会社の開示資料、株探、IR BANK。業績・財務・配当の実績は各年の「決算短信」(2009年5月〜2026年5月12日発表分)、今期の実績と予想は「2027年3月期 第1四半期決算短信」および「2027年3月期 通期業績予想に関するお知らせ」(いずれも2026年8月6日)、配当方針は「配当方針の変更(DOE導入)および配当予想の修正に関するお知らせ」(2026年8月6日)、自己資本比率の方針と2030年度目標は「2045年に向けた長期ビジョン」ならびに「新中期経営計画(2026〜2030年度)の骨子」の策定(2026年8月6日、8月12日訂正)、株主構成・従業員数・株主優待は「第113回定時株主総会招集ご通知」(2026年6月4日)、特別損失は「特別損失の計上に関するお知らせ」(2026年2月9日)によります。株価は株探の月足データ(各年3月末終値)と2026年9月4日終値。
※1株配当は株式分割・株式併合を調整した数字で並べています。2016年10月1日に5株を1株にする併合、2026年4月1日に1株を5株にする分割があり、この2つは打ち消し合うため、2016年9月以前の実際の金額とそろっています。会社が実際に払った金額は、2026年3月期が220円、2025年3月期が200円です。
※配当性向とDOE(純資産配当率)は、各年の決算短信に会社が記載した数値をそのまま使っています。1株配当を1株利益で割った計算とは一致しません。
※新しい配当方針のDOEは「配当総額÷前期末株主資本」で、決算短信の「純資産配当率」とは分母が違います(株主資本は純資産からその他の包括利益累計額を除いた金額)。本文の3.42%は、2026年3月期の配当総額28億6,300万円を前期末の株主資本838億円で割った数字です。
※配当利回りの推移は、各年3月末の終値とその期の1株配当から計算しています。「いま」は2026年9月4日終値1,465円と今期予想70円によります。
※同業比較の2社は、同じ吸水性樹脂を手がけていて決算期もそろっているものを選びました。3社とも2026年3月期・連結の数字です。