銘柄分析

MS-Japan(6539)は配当性向134%。
それでも売らないと決めた理由

2026年8月26日 / 東証プライム・サービス業(人材紹介)

持っている64銘柄のなかで、いちばん含み損が大きいのがMS-Japanです。

買ったときより1割以上下がったまま、戻ってきません。それなのに配当は減っていない。下がるには理由があるはずだと思って、決算を最初から見てみました。

結果を先に出します。

6539 MS-Japan(人材紹介)/2026年3月期の実績
配当利回り5.5%
配当性向134.5%
自己資本比率88.1%
株価1,013円・配当利回り5.5%・PER23.3倍・PBR2.94倍は2026年8月26日時点。業績は2026年3月期(2026年5月12日発表)の数字です。
いつも見ている8つこの会社
売上高は伸びているか76.5億円(+2.3%)
直近3か月は減収
営業利益率は10%以上か21.9%
1株利益(EPS)は伸びているか41.64円(4年連続で減)×
営業キャッシュフローは黒字か16.2億円(過去最高)
配当は減っていないか56円(3期すえ置き)
配当性向は30〜50%か134.5%×
自己資本比率は40%以上か88.1%
手元の現金は増えているか38.5億円(3年で49億円減)×
私の判断:売らない。ただし「持っている銘柄」から「見ている銘柄」に変えます。

◎が3つ、○が2つ、×が3つ。財務は極めて丈夫なのに、稼ぐ力と手元の現金が細っている、という形です。

ここから先は、この表の中身を1つずつ見ていきます。

どんな会社か

経理・人事・法務といった管理部門と、税理士や弁護士のような資格を持つ人に特化した人材紹介の会社です。

誰でも知っている会社ではありませんが、この分野では長くやっています。人材紹介というと未経験者や若手を扱う会社が多いなかで、専門職に絞っているのが特徴です。

◎のところ:商売と財務は丈夫

売上76.5億円、営業利益16.7億円。どちらも前の期より増えています。営業利益率は21.9%あり、これは「1,000円売って219円が本業の利益として残る」ということです。人を紹介するだけで在庫を持たない商売なので、もともと利益率は高く出ます。

ただし売上だけは◎にしませんでした。伸びた中身が自前の成長ではないことと、直近3か月が減収に転じていることが引っかかったからです。どちらもあとで書きます。

そして自己資本比率88.1%。借金がほとんどありません。潰れる心配をする水準ではありません。

秘書のツミキ 自己資本比率は、会社の資産のうち返さなくてよいお金が何%かを示す数字です。40%あれば健全とされます。88%は、かなり少数派の水準です。

×のところ①:配当性向134.5%

項目2026年3月期
1株あたり配当56.00円
1株あたり利益(EPS)41.64円
配当性向134.5%

配当性向134.5%。1株で41円しか稼いでいないのに、56円を配っているということです。

私は投資方針の記事に「配当性向が高すぎる銘柄は買わない」と書きました。80%を超えていたら理由を確かめたほうがいい、とも書きました。

その自分が、134%の銘柄を持っていました。

なぜこうなっているのか

調べたら、会社が意図してやっていました。

2023年3月期から2025年3月期までの3年間、配当性向100%を基準にすると公表しています。それ以前の基準は30%でした。「この3年は稼いだ分を全部返す」と宣言していた、ということです。

知らずに持っていたわけですが、無理をして絞り出していた数字ではありませんでした。

借金して配っているわけではない

100%を超えている分は、それまでに貯めてきたお金から出ています。ではその出どころは大丈夫なのか。ここを確かめました。

2026年3月期のお金の出入り
営業キャッシュフロー16.2億円
配当の支払い(概算)約14億円

本業で入ってきた現金の範囲には収まっています。借りたお金や、資産を売ったお金で配当を出している状態ではありません。

ただし、ここには続きがあります。営業キャッシュフローから設備などへの支出を引いた「自由に使えるお金」は10.6億円でした。そこから株主に出て行ったのは14.8億円です。

2026年3月期金額
営業キャッシュフロー16.2億円
自由に使えるお金(フリーCF)10.6億円
株主に出て行ったお金14.8億円

差の4億円ほどは、貯金から出ています。その年に稼いだ現金では足りていない、というのが正確なところでした。

秘書のツミキ 利益と現金は別物です。利益は会計上の計算結果なので、実際の現金の出入りとはずれます。配当を払い続けられるかを見るときは、利益より営業キャッシュフローのほうが確かです。

その年に稼いだ現金の範囲には収まっている、ということです。

×のところ②:稼ぐ力が細っている

問題はこちらでした。1株利益(EPS)が伸びていません。もとの純利益で見ると、はっきり下がっています。

純利益
2023年3月期12.2億円
2024年3月期11.3億円
2025年3月期10.3億円
2026年3月期10.3億円

売上は2025年3月期に45.7億円から74.7億円へ大きく伸びています。ただしこれは、オーストラリアの人材紹介会社を子会社にして、その分を取り込んだためです。売上は増えても、利益はついてきていません。

もっと長く見ると、はっきりします。この会社の利益のピークは2020年3月期です。1株利益は当時55.2円。いまは41.6円です。売上は過去最高を更新し続けているのに、利益は6年前を超えられていません。

×のところ③:手元の現金が減っている

現金など
2023年3月期87.3億円
2024年3月期46.7億円
2025年3月期42.3億円
2026年3月期38.5億円

3年で約49億円減りました。返す義務のないお金を、株主に返してきた結果です。

×が3つ並びましたが、3つはつながっています。稼ぐ力が伸びないまま、利益より多く配り続けているので、貯金が減っている。そういう1本の話です。

高い利回りには理由があります。この銘柄の場合は「会社が意図して多く配っている」でした。悪い理由ではありませんが、いつまで続けられるかは別の話です。

いちばん新しい決算は、減益スタートだった

ここまでは2026年3月期、つまり3月に終わった1年の話です。その先も出ていました。2026年8月6日、20日前に第1四半期(4〜6月)の決算が出ています。

2026年4〜6月金額前年同期比
売上高19.4億円-1.5%
営業利益4.2億円-6.9%
経常利益4.5億円-3.4%
純利益2.6億円-9.1%

4つとも前の年を下回りました。会社は今期の通期予想を「純利益+4.6%」としています。増益で終わる計画なのに、出だしは減益ということです。

3か月の数字だけで慌てる必要はありません。人材紹介は時期によって波があります。それでも、私が気にしている「稼ぐ力が細っている」という話と、同じ方向を向いた数字ではあります。

秘書のツミキ 1年の業績は3か月ごとに4回に分けて発表されます。決算というと年1回のイメージがありますが、途中経過が年3回はさまります。持っている会社の様子を知るには、この途中経過を見るのが早いです。

それで、どう判断したか

売りません。ただし「持っている銘柄」から「見ている銘柄」に変えます。

売らない理由

  1. 減配していない(56円を3期続けて維持している)
  2. 会社が来期も56円を予想している
  3. 財務が壊れていない(自己資本比率88.1%)

私が売ると決めているのは、減配・業績の悪化・タコ足配当・不正の4つが出たときです。今のところ、どれにも当たっていません。

株価が下がったこと自体は、売る理由に入れていません。配当を目的に買った株なので、株価が下がれば利回りはむしろ上がります。

それでも「見ている銘柄」に変える理由

利益が増えないまま配当を出し続ければ、いつかは貯金が尽きるからです。まだ尽きてはいませんが、その方向に向かっていることは数字に出ています。

これから何を見るか

  1. 2027年3月期の配当が、予想どおり56円で着地するか
  2. 次の決算(11月ごろ発表の4〜9月)で、減益が続くか止まるか
  3. 会社が新しい配当方針を出すか

いちばん気になっているのは3つ目です。配当性向100%という方針は2025年3月期で期限が来ています。そのあと会社がどういう方針を掲げているのか、探した範囲では見つけられませんでした。次の決算資料で確かめます。

含み損を抱えたまま、配当だけ受け取り続けている状態です。株価だけを見れば失敗した買い物に見えます。

ですが、配当を目的に買った以上、株価が下がったことは売る理由になりません。売る理由になるのは、配当が出せなくなったときだけです。それが近いのかどうかを、これから見ていきます。

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